脂肪由来幹細胞(ASC)治療 脂肪由来幹細胞(ASC)治療

ASC療法

ASC療法とは ASCとは脂肪組織由来幹細胞のことで、脂肪組織の中に多く存在する幹細胞のことです。山中伸弥教授のノーベル賞受賞で一躍有名になったiPS細胞もこの幹細胞の中の一つです。

幹細胞には自分と同じ細胞をつくる自己複製能という力と体の様々な組織(軟骨、神経、筋肉など)の細胞へかわる多分化能という普通の細胞にはない能力があります。

ASC療法はこの脂肪組織由来幹細胞の組織の炎症を抑える力と、自己複製を繰り返しながら痛んだ組織を修復することが期待される治療です。

バイオセラピーという新しい治療

これまでの変形性ひざ関節症の治療

これまでの変形性ひざ関節症の治療では、大きく分けると、軽度なら運動療法や薬物療法による保存療法、重度なら手術療法が行われています。軽度であれば運動療法や減量、消炎鎮痛薬(内服薬・貼付薬)で様子を見ることができますが、その後、病気が進行してくると、消炎鎮痛薬に加えて、膝の関節内にヒアルロン酸を注射して痛みを和らげる治療がよく行われています。さらに病気が進行した場合は、手術療法となります。手術療法には、いくつかの種類がありますが、中心になっているのは人工関節を用いたものです。

これまでの変形性ひざ関節症の治療

脂肪由来幹細胞によるバイオセラピー

従来のヒアルロン酸注射を含む保存療法では痛みが取れない状況にあるもの の、骨の変形までは病気が進んでおらず、人工関節の手術は避けたいと考える 方に適しているのが、この治療です。患者さんご自身の脂肪を採取し、そこに 含まれる幹細胞を培養して、ひざ関節に注入します。誰もが持つ自然治癒力を利 用し、病気の進行を遅らせたり食い止めたりして痛みを取ることを目指す、から だに負担の少ない治療です。高齢の方でも受けることができます。新しい治療 法のため、保険診療ではなく、自由診療で行われています。

脂肪由来幹細胞によるバイオセラピー

治療の流れと期待される効果

治療の流れ

本治療は次のような4つのステップで進められます。

①患者さんご自身の脂肪組織を少量採取します。

②採取した脂肪から幹細胞を抽出します。

③幹細胞を培養します。

④培養した幹細胞を患者さんの関節に注入します。

※来院は①と④の2回です。

治療の流れ

期待される効果

関節に注関節に注入した幹細胞は、痛みを抑える効果と、炎 症をしずめる効果が期待されています。数ヵ月に わたって痛みが緩和され続けたことを示す研究論文も報告されています。

●痛みを抑える

関節に注入した幹細胞は、痛みを抑える効果のもとになる物質を体内で作り続けます。効果が長期間続くのは、このためだと考えられています。

●炎症をしずめる

治療後の痛みの変化 関節の痛みは、多くの場合、患部が炎症を起こしているこ とが原因です。注入した幹細胞は、炎症をしずめる効果が あると考えられています。